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なぜ今、タイ進出なのか
ご存知の通り、我が国は、2020年の東京オリンピックを前に、訪日インバウンドによる国内需要増が見込まれるとはいえ、中長期的には、人口減少や少子高齢化などによる国内市場のシュリンクは止められない。そこで多くの企業は、長期的な経営戦略の中で、国外に活路を求め、海外進出する企業が増加傾向にあるのは周知の通りだろう。
中でも「世界の成長センター」と言われるASEAN(東南アジア諸国連合)では、2015年に、域内人口6億人の単一市場となるASEAN経済共同体(AEC)が発足。生産拠点及び市場として捉えたサービス事業など、海外進出を検討する上で外せない地域だ。
とりわけ、タイは製造業の産業集積により経済発展を遂げ、製造・販売の両拠点としての価値は高く、近年では、隣国である後発開発途上国(カンボジア、ラオス、ミャンマー/CLM)を加えたタイプラスワンの動きや、広域事業展開の中心的な役割も担う。
投資促進を呼びかけるタイ政府
タイは、いわゆる“中進国からの罠”の脱却を目指し、“EEC”=Eastern Economic Corridorの略で、日本語では東部経済回廊という、タイ政府が最も注力する巨大国家プロジェクトをぶち上げる。タイ東部沿岸地域のチョンブリー、ラヨーン、チャチューンサオの3県にまたがり、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)といった次世代自動車をはじめ、医療、航空、ロボットなどハイテク産業の特定業種の投資促進と陸海空インフラなどを一体的に開発。スワンナプーム、ドンムアンなどバンコクの既存空港とEEC域内のウタパオ空港を結ぶ高速鉄道や域内3港湾整備、スマートシティなど、5年間で1.5兆バーツ(約5兆円)というインフラ投資予算を官民で予定する。当然、タイ政府が望むのは民間資金による整備。外資の参入障壁の撤廃や税制改正など投資環境の整備を整え、さらなる投資促進を呼びかけている。
それに呼応する形で実現したのが、2017年9月11〜13日、世耕弘成経産相の訪タイに合わせJETROが主催した、過去最大規模(約600人)の日本の経済視察団とのビジネス交流だ。タイが求めたのはEECへの日系企業による、さらなる投資。視察団の表敬訪問を受けた、プラユット暫定首相は「EECは今後、20年に渡って整備される一大国家プロジェクトです。法律で定められた構想なので政権が代わろうとも続きます」と信用を求めた。
非製造業にとっては、中間所得層が増え、魅力高まるマーケット“バンコク”だが、製造業が狙うのは、今後20年に渡って整備が進むEECだろう。日系企業にとっては、どれだけ享受できるのか、号砲は鳴らされたばかりだ。
※EEC(東部経済回廊)についての解説記事はこちらマンガでわかる!タイ進出入門ガイド
「マンガでわかる!タイ進出入門ガイド」では、タイ進出の検討から会社設立など、詳細かつわかりやすく説明していきます。