5. 不祥事を未然に解決し、被害を最小に。ひいては企業価値の向上にも繋がる「内部通報」がグローバル・スタンダード
通報内容が外部に漏れずに早期に被害を発見できる利点
まず、「内部告発」と「内部通報」の違いを正しく整理しておきましょう。
「内部告発」とは、法令違反や会社の不利益となるような違法行為について、行政やマスコミなど社外に公表することを意味します。
これに対し後者の「内部通報」は、そのような行為を会社が設けた通報窓口に匿名で連絡・相談することを指します。
これにより通報される内容が公に出回ることがなく、不正の早期解決にも役立つのです。
タイには日本のような「公益通報者保護法」などはありませんが、企業が個別に「Whistleblowing Policy and Procedure」と呼ばれる公益通報者保護制度を設けることが増え、内部通報者の保護に取り組んでいる日系企業も増加傾向にあります。
リスクの管理はもちろん、企業の信頼を得られるメリットも
冒頭でご説明したコンプライアンス導入のメリットの中でも、内部通報制度の意義についてお話しました。
適切な内部通報制度を設置することにより、早期にリスクを発見・確認し、拡大や再発防止の取り組みに役立てられるのが大きな特徴です。
地理的要因や言語・コミュニケーション問題、マネジメント体制の不備など、不正に繋がる要素はさまざまですが、一般的に海外拠点での不正被害額は高額になる傾向があります。
また、社内不正の発見には内部監査よりも従業員などからのホットラインが有効的だという調査報告もあり、タイでも導入を進める企業が激増しています。
内部通報制度は違法行為への抑止力や自浄作用として機能するだけでなく、従業員にとって安心して働ける「クリーンな労働環境」の提供にも寄与します。
誰だって制度の整った信頼できる職場で働きたいですし、就職や転職をしたいですよね。
また、これは各ステークホルダーの視点からも同様のことが言えると思います。
健全なコンプライアンス体制を持つ企業との取引は、自社の信頼獲得にも繋がるからです。
数あるライバル企業の中から選ばれる会社になるための、武器の一つと考えてもよいのではないでしょうか。
通報制度の正しい運用には、従業員への周知・教育が必須
単に制度を導入しただけで、従業員がその存在や通報方法を知らなかったのではまったく意味がありませんよね。
経営陣には制度導入の目的や重要性を継続的に従業員に情報発信し、状況に見合った制度にアップデートし続ける責任があります。
これを繰り返すことにより、社内の自浄作用を高め、不正の発生抑制を強化することができるのです。
通報内容は横領や不正会計といった法令違反から、パワハラや差別、過度な接待などさまざまですが、中には単なる会社への不満のはけ口として利用されてしまうこともあります。
そのため、正しい制度の活用方法を徹底することが大切です。
定期的に、外部専門家によるコンプライアンス説明会や内部通報セミナーを活用するのも有用だと言えるでしょう。
公益財団法人 東京都中小企業振興公社 タイ事務所
東京都の中小企業支援機関である(公財)東京都中小企業振興公社(Tokyo SME Support Center)は、2015年12月にタイへ事務所を設置し業務を開始。
優れた日本の技術や製品を広く世界に発信することを目的に、タイ工業省や金融機関などと連携し、さまざまなサポートを行っています。
主な活動内容は次の3つです。
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経営相談
タイにおける企業経営の無料相談に、弁護士や公認会計士、税理士など実務経験豊富な専門家が日替わりで対応。(月~金曜13:00~17:00)。東京都に拠点がない会社や中小企業以外でも利用でき、2018度の相談件数は335件を上回る。
主な相談分野は、人事・労務、会計・税務、法務、会社設立に関する手続きなど。タイ進出を検討する企業には投資奨励や会社設立手続き、ビザやワークパーミットといった実務に関する情報収集に、既進出企業からは日常的な会社運営上の相談を中心に、セカンドオピニオンとしても活用される。 -
ビジネスマッチング
東京都に拠点がある中小企業の依頼を受け、販売代理店、調達先、生産委託先などの紹介を行う。最近は、調達先としてタイローカル企業を紹介するケースが増加している。
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経営セミナー・商談会の開催
経営相談の中でも特に関心が高いトピックをテーマに、月に1回程度セミナーを実施。経営相談員が講師となり、移転価格税制やコンプライアンス、個人情報保護法などについてガイダンスを行う。
また、日本企業とタイ企業の交流会などイベントを年に数回催している。
お問い合わせはこちらまで
Tokyo SME Support Center | |
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住所 | 20th Fl., Interchange21 Bldg, 399 Sukhumvit Rd., |
電話 | 02-611-2641(津田・シリン)※日本語対応可 |
thai-branch@tokyo-kosha.or.jp | |
WEBサイト | http://www.tho.tokyo-trade-center.or.jp |