よくある事業相談
取締役会や株主総会で決議を行う際、電話やインターネットによるテレビ通話で参加することは認められていますか?
3. タイでビジネスを軌道に乗せるために 留意すべきは「会社法」と「労働法」
会社の意思決定権や仕組みが日本とは異なることを念頭に
現行のタイの「会社法」は、やや柔軟性に欠けると言えます。
例えば企業の機関設計についてメコン地域を比較すると、カンボジアやラオス、ミャンマーでは最低株主数が1名であるのに対し、タイは3名です。
また取締役会において法律上、「書面決議が認められない」「普通株や優先株の転換が容易ではない」「第三者割当増資ができない」といったことが挙げられます。
こういったタイの機関設計は、日本や諸外国の感覚からすると、運営上、利用しづらい制度と感じられるのではないでしょうか。
外資規制があるからこそ、付属定款の作成が重要ですね
自国経済の保護という概念から、前述のようなローカルに有利な機関設計を敷いているとも言えます。
タイでは、付属定款の作成は会社の任意です。
このため、タイ企業との合弁の場合には予め株主間契約や付属定款について会社の運営ルールなどを設計しておかないと、良からぬトラブルが生じる可能性があります。
また、日本とタイの文化の相違がビジネス上のトラブルを引き起こすこともしばしば。
タイの民商法上、株式の譲渡制限が存在しないため、付属定款において記載がなければ、自由に株式を移転させることも可能となってしまう可能性があります。
そのため、パートナー企業に会社を私物化されてしまう事態もよく起きているのです。
今年(2019年)に施行された「労働者保護法」の改正内容に合わせた運用を
19年5月5日に、改正労働者保護法が施行されました。
主な改正ポイントとしては、事務所移転時の従業員への事前告知の義務化や、雇用主変更時の従業員の同意などが挙げられます。
法的に就業規則の内容を変更する必要はありませんが(労働法は強行法規のため明文化せずとも強制的に適用)、改正法に対応した就業規則を作成することが推奨されます。
実は相談件数No.1『人材の解雇・減給処分』について
東京都中小企業振興公社に寄せられる相談で、最も多いのが「人事労務」についてのお悩みです。
中でも、どの企業様も従業員の解雇問題について頭を抱えていらっしゃいます。
「労働者保護法」のもと、良くも悪くも従業員が簡単に労働裁判を起こせるのがここタイです。
不当解雇にあたると判断された場合、裁判所から雇戻判断や損害賠償請求判断がなされることが多いため、解雇などの際には慎重を期す必要があります。
法律上、解雇が認められる要件として「賃金支払前の事前通知」「勤続年数に応じた解雇保証金の支払」「残存有給休暇の補償」などが挙げられます。
これらに加え判例上、解雇のための「正当事由」が求められます。
そのため、人材関係に関する悩みが生じた場合にはまずは専門家に相談し、法的に背景と証拠を踏まえたうえで対応策を検討すべきと考えます。
また、「能力の足りない従業員に対し降格・減給させたい」という相談も多いですが、当然、当事者間の合意がなければこれらの処分は認められません。
会社の独断で労働者の不利益となる雇用条件や就業規則を変更する場合には、全従業員の合意が必要なのでご留意ください。