JICA 国際協力機構

JICA 国際協力機構

「次の20年に向けた地図を描く」
タイ事務所 所長 田中 啓生

《プロフィール》
たなか ひろお

■1966年生まれ、岡山県玉野市出身。工学系大学院修了後、米仏系石油探査会社入社〜96年JICAに転職。インドネシア事務所、総務部、JICA研究所、資源エネルギー部門などを経て現在に至る
■座右の銘:虚心坦懐
■愛読書:政治経済や歴史に関する本
■尊敬する人物:幕末の志士たち
■趣味:アウトドア、オートキャンプ(タイでは封印中)
■バンコクの行きつけ店:職場近くのバーミー屋さん
■愛用の腕時計や鞄など:週末用のG-ShockとVibram底の靴
■社用車または愛車:レガシーツーリングワゴン(日本)
■休日の過ごし方:ジムと事務所(残業)、たまにゴルフ

 


 

現在の主な事業は?
大きく分けて4つの柱があります。交通セクターへの協力、産業人材育成、高齢化対策、気候変動対策です。1つ目の交通セクターでは、主にバンコクの都市鉄道や新幹線などの新路線開発の計画作りと、資金提供の面で協力しています。そこには沿線開発や駅ナカ開発も含まれ、総合的な支援となることを意識しています。

2つ目は、産業人材育成です。御存知の通り、タイには多くの日系企業があり、工業生産高の大半を自動車産業をはじめとした日系企業が担っていますが、現場では「技術系人材が量・質ともに不足している」という声が上がっています。これは、産業界に求められるタイ人技術者を供給しなければ、タイでの産業集積が維持できなくなってしまうということです。

具体的な対策としては
バンコクのラッカバンまたトンブリー県それぞれにある2つの著名な大学内に“高専学校”(以下、高専)を設立する準備を進めています。タイにはこれまで、職業訓練校はあっても高専はなかったので、タイ初の高専になります。自動車産業や電子産業、機械工学、電子工学、情報処理など、今のタイの強みを生かしていきながら技術を強化するのが理想ですね。タイ政府が目指すデジタル経済への移行に向けて、国外に頼るのではなく国内で自立できるよう、その人的基盤を作れればと思っています。

タイの高齢化も気になるところです
はい。まさに3つ目は、高齢化対策です。タイはASEANでトップを走る高齢化社会。超高齢社会に到達した日本の歩みを教訓に、タイではそうならないようサポート体制の構築を進めています。しかし喜ばしいのは、医療サービスの質もレベルも高いこと。途上国の中でタイはいち早く、誰もが医療を受けられる(ユニバーサルヘルスケア・UHC)を実現しています。基盤となる医療体制は整っているので、あとは制度として活用できるシステムを確立させたいです。

そして4つ目は、気候変動対策です。CO2の排出量を減らし、クリーンな成長を目指すための指針です。まずは、タイ自身がクリーンな成長を実現すること。そしてその経験を、タイ周辺国に拡げていきたいですね。

“ある計画”が進行中と伺いました
バンコク中心部では電車や鉄道など開発が進んでいますが、実はそのマスタープランは20数年前にJICAが協力して作ったものなんです。パープルラインが徐々に形となり、今後ピンクライン、イエローライン、オレンジラインの工事も控えています。それに着手すれば、現行のマスタープランはすべて実行したことになる。そこで、“次の20年計画”です。

1年前に、タイ政府から新たなマスタープラン作成の依頼を受けました。今まさにそれに取り組んでいるところで、今年3月に全体の骨組みを提示する予定です。その後2年ほどかけてより詳細な調査を行い、細部を詰めていきます。

重要な時期に赴任されましたね
そうですね。前回のマスタープラン作りでは、白地図に新たな路線を入れていく作業でしたが、今回は既存の鉄道事業者があるところに加えていく。難しい利害調整も生じるため考え込む場面も多いですが、大きなやりがいも感じています。

渋滞緩和に向けての対策も
今やほとんどの人たちが携帯で交通情報を確認していますが、驚くことにバンコクの信号機は手動です。タイは昔、センサーによる信号機の自動化に失敗した過去を引きずり、頑なに自動化を拒んでいます。

我々は、1年半ほど前に信号機の手動・自動で社会実験を行い、自動化の優位性をタイ政府に証明しました。今年はさらに広範囲で社会実験を行う予定です。

これにより渋滞が解消されると、モノの流れがスムーズになり、時間も有効活用できる。それが経済全体の活性化に繋がります。日本のパートナーであるタイと共に発展できるよう、これからも尽力していきます。

タイ外務省イベントにて、日タイ協力の強化をアピール

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