【第61回】支払条件

長谷場:さて3カ月以上にわたって説明してきたEECについては前回で終了です。今回から少し視点を変えて、ビジネスで役立ちそうなトピックを説明していきます。

ミィ:楽しくいきましょう、イェイ!

長谷場:在タイ日系企業がタイ企業と取引をする際の支払では、問題が多々あります。

ミィ:お金はトラブルが多いですよね。

長谷場:はい。企業間の売買は後払いが多く「ネジを1000本、明後日の10時に持ってきてください」と発注をすると、ネジと一緒に「TAX INVOICE」という書類が届きます。

ミィ:請求書?

長谷場:そう、そこには「いつまでに△△銀行にお金を振り込んでください」というような「支払条件」が書かれています。多くの場合、「翌月の月末(または●日)までに振り込んでください」という支払期日が書かれています。

ミィ:買ったんだから払いますよね。

長谷場:タイの場合この支払期日が日本より短いことが多いんです。実は“売った後すぐにお金が入る”ということは企業の資金繰りには、とっても大事なことなんです。入ってきたお金を運転資金などに回すことができますからね。でも、何日もお金が入ってこないと、その間に使うお金は別に用意しておかないといけません。

ミィ:でも、どうして日本とタイでそんなに違うんですか?

長谷場:興味深いのはそこなんです。アジア通貨危機のところで説明しましたが、1997年ごろのタイの銀行の預入金利はどれぐらいだったか覚えていますか?

ミィ:はっ! 10パーセント! そうかぁ、お金を払う側はできるだけ支払期限ぎりぎりに払った方が得ですよね。その間、利息が付くのですから。

長谷場:一方、もらう側は早くもらわないと利息分損をするだけではなく、その間にインフレが進んで、もらうお金の価値が減ってしまうかも知れませんし、最悪の場合、相手が倒産してしまってお金をもらえないことだってあり得ます。この両者がおかれた状況が、日本より短い支払期日が定着した理由なのではないかと思います。

ミィ:う〜ん、お互いの思惑が・・・

長谷場:今はそれほど銀行の預金金利は高くないのですが「支払いを遅らせたほうが得!」という考え方はもはやタイ企業の文化として残ってしまっています。ようするに「もらえるものは早くもらいましょう。払わないといけないものは、できるだけ遅くにしましょう。(できれば忘れるか諦めてもらいましょう)」という考え方です。

ミィ:え?小声ですごいこと言いませんでした?

長谷場:実は、(日本企業でも起こりますが)難しい点として、いろいろ言って支払期限が過ぎても払ってくれないことがあるんです。

ミィ:そんな、ひどい。そういう時はどうしたらいいんですか?

長谷場:対策として、継続的な取引をしている場合は“すぐに納品を止める”ことです。納品を突然止めると相手も困るので慌てて払ってくれる、ということもありますし、何よりリスクが小さいうちに損切できます。

ミィ:えー、強引ですね。

長谷場:いちばん気を付けないといけないのが、1回限りの取引の場合です。できれば前払いか納品と同時に払ってもらう、というのがいいですね。このパターンでは建築を請け負った場合によく問題が起きています。建築の場合、工事の進捗に合わせてお金を払ってもらうのですが、どうしても最後に「完成したことを確認してから〇%を支払う」というような契約になります。ところが様々な理由を付けて結局は払ってくれない、ということが起きるんです。

ミィ:それは困りますねぇ〜。

長谷場:これはなかなか対処の仕方が難しくて、最後の支払いの割合をできるだけ小さくしてリスクを減らしておいたほうがいいだろう、と思っています。あと、小切手を受け取っておくと、不渡りになった場合に刑事罰の対象になるので抑止力にはなりますよ。

—次回に続く