長谷場:2013年からBOIは大きな政策転換をしようと動き始めます。これまでBOIはずっと「田舎に行けば行くほど、長い期間法人税の免税恩典を与える」というゾーン制を採用していました。これを「タイ政府が欲しいと思う事業をランク付けして、本当に欲しい事業ほど有利な法人税免税やその他の恩典を与える」という事業別の恩典制度に変えようと動き始めます。

ミィ:うーん。どういうことですか?

長谷場:例えば『金属部品を含む金属製品の製造』に与えられる法人税の免税期間は、どこの県※であっても同じで、8年以下から5年以下(工業団地内なら1年追加)」となってしまいました。

ミィ:場所は関係ないと、すごい変化ですね。

長谷場:はい。とっても大きな方針転換だったため、BOIは当初、パブリック・ヒアリングをしながら13年中に新しい政策を固め、14年を準備期間として15年1月から新政策開始というスケジュールを考えていました。ところが・・・。

ミィ:2014年といえばクーデター?

長谷場:そう、2013年の反政権デモで、いくつかの政府機関がデモ隊の影響で閉鎖される事態になりました。そして2014年5月22日にはクーデターが起きてしまいます。このため、最終的な新投資奨励政策の発表は遅れに遅れ14年12月3日になってしまいました。

ミィ:えー。では、当然、15年1月からの開始は延期ですよね?

長谷場:そうなるだろうと私も思ったのですが・・・。実際にはそうはならず、15年1月からの施行はそのまま変わらなかったんです。そして、大きな問題はさっきの例のように、もらえる恩典が少なくなってしまうケースが続出してしまったことなんです。

ミィ:それじゃあ批判が殺到したのでは?

長谷場:15年からは新政策が適用されてしまうのですが、より有利な旧政策での恩典をもらおうとした場合「14年12月30日までに申請書を提出すること」という条件がありました。

ミィ:27日しかないじゃないですか!?いそげー!

長谷場:はい。そうなんです。もちろん、我々ジェトロも状況を皆さんにお伝えするために頑張ったのですが、日本企業で気付いた人達で追加投資を考えていた人はみんな急ぎました。その結果、日本からの投資奨励申請がグラフのようになってしまいました。

ミィ:14年の第4四半期がすごいことになっていますね!

長谷場:そうなんです。記録的な金額になったのですが、前回のファーストカー政策の時の自動車と同じで、そんなしょっちゅう工場を建てたり、機械を購入したりしないですよね。だから・・・。

ミィ:15年以降の申請が激減してしまっていると。なんか先週と同じ話の展開のような・・・。

長谷場:そうなんです。これも、ファーストカー政策の時の自動車と同じで「需要の先食い」となってしまったわけです。日本からの投資申請は15年には10分の1以下に減ってしまいました。そこでBOIはまた新たな政策を打ち出します。詳しくは次回!

—次回に続く

※2018年、週刊ワイズ連載「ミイ泰ビジネスを学ぶ」より
http://www.wisebk.com/