【第33回】2006年クーデター(後編)

長谷場:閣僚への利益誘導が問題となって2005年から反政権市民集会が開かれるようになったタクシン政権。一時は下火になりましたが・・・。。

ミィ:先週はいいところで終わったから続きが気になります。

長谷場:06年1月にタクシン首相一族が保有するShin Corporationの株式(49.6%)をシンガポールの政府系投資会社(テマセク・ホールディングス社)に売却して723億バーツの利益を上げていたことが判明します。

ミィ:株の売買なら問題ないのでは?

長谷場:そうなんですが、Shin Corporationは携帯電話、放送衛星、テレビ局といった企業をグループに抱えていました。これらの事業をシンガポールの会社がタイでできるかというと、どうですか?

ミィ:あ! 外国人事業法!

長谷場:そうなんです。その外国人事業法を表のような形で逃れていたんです。

ミィ:確かに、タイ人と外国人の比率はタイ側過半数以上というルールが守られていると…。でも、なぜタクシンさんはこんなことを?

長谷場:タクシン首相は「これが一族企業への利益誘導疑惑を断ち切る切り札」と説明しています。要するに「一族が企業を所有しているから批判を受けるのであって、売ってしまえばもう批判を受けないだろう」と。

ミィ:確かにそうとも考えられますけど?

長谷場:しかし思惑通りにはならず、さらに「所得税を一切払わなかった」ということで国民の怒りを買い、終わりかけていたデモが再び盛り上がってしまったんです。

ミィ:消えかけていた火に油が。

長谷場:そこで、タクシン首相は06年2月に下院を解散し選挙に打って出ます。野党が選挙をボイコットし、120を超える選挙区ではタイ愛国党以外の立候補者がいない状況になりました。

ミィ:じゃあ、選挙は圧勝ですね。

長谷場:そうなんですが、憲法裁判所が「選挙は無効」という判決を出してしまいます。選挙が無効でも政府を動かさないといけないので、タクシン首相は5月20日に国政復帰を宣言して閣議を開催するなどしました。しかし、選挙については「選挙による政治安定」を狙うタクシン首相と、「首相辞任」を求める反タクシン派の間でこう着状態となってしまいました。
このような状況でタクシン首相がニューヨークで行われる国連総会に出席するためタイを離れた06年9月19日に陸海空の3軍の司令官と警察長官からなる「国王を元首とする民主主義制度改革団(Council for Democratic Reform:CDR)がクーデターを起こしました。議長は陸軍総司令官でして、この構図は2014年のクーデターの時も同じでした。

ミィ:妹のインラック首相の時ですね。

長谷場:このタクシン派と反タクシン派の対立構造が今のタイにまで長く続く政治対立として影を落としているんです。

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—次回に続く

※2018年、週刊ワイズ連載「ミイ泰ビジネスを学ぶ」より
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