【第32回】コンサルタントに丸投げする会社に将来はない(後編)

【第32回】コンサルタントに丸投げする会社に将来はない(後編)

経営コンサルタントの何が問題なのであろうか? 第一に「経営戦略に画一的な正解などない」ということであろう。人々は「ベストプラクティス(最良の実践方法)」という言葉にだまされて、「永遠の経営戦略」の存在を信じてしまう。

経営戦略に画一的な正解などない

これが間違いの始まりである。経営戦略を立案するということは、業界の動向や競合先の分析、消費者ニーズなどの情報を収集し、更にシミュレーションを行うことである。こうしたプロセスを経ることによって、いかなる事態にも備えられる準備が出来るのである。

こうしたプロセスを行うことの重要性については、軍事戦略家であった南北戦争当時のユリシーズ・グラント将軍や第2次世界大戦当時のアイゼンハワー大統領を引き合いに出す。「戦闘準備において作戦そのものは役に立たないことは常に思い知らされたが、作戦をたてる行為こそ重要だ」(アイゼンハワー大統領談)。すなわち経営コンサルタントを雇うということは、経営者自らが情報収集したり、シミュレーションを行ったりするなどの思考行為を放棄していることなのである。

経営戦略が軍事戦略に比して更に問題なのは、軍事戦略は斥候などを含め現場からの情報収集に注力するが、経営戦略は流行の理論に基づいた机上の空論でしかないことである。更にフェラン氏は、コンサルタントの間違いとして次の3つを指摘している。

①従業員を資産として扱い、平均的従業員にはアメとムチの管理が必要としているが、実際はこの方式は生産性を悪化させる。
②報酬評価制度を導入すると、従業員は会社の利益を犠牲にして自己の利益を追求する。
③社員は自己の利益を追求するあまり、平気で法律違反を起こす。

こうして新たなコンサルティング理論を導入したことによって失敗した事例は枚挙にいとまがない。モトローラなど「コアコンピタンス」を導入した企業の半数以上は凋落してしまった。また「KPI」を導入したエンロン、IBMクレジット、シアーズオートセンター(自動車修理チェーン店)など多数の会社が社内犯罪に遭遇している。さらに、フェラン氏の知人で報酬コンサルタントであるマーク・ホダック氏の研究(Chief Executive誌 2006年7-8月号)によれば、業績給制度を採用している企業の業績はS&P500社の企業業績に比して3.5%悪いとの結果が出ている。

コンサルタントは魔法の玉手箱ではない

それでは、経営コンサルタントを使うこと自体、間違いなのであろうか?

実は私の勤めるバンコック銀行も日タイの会社・銀行数社と共同で「バンコク・コンサルティング・パートナーズ(BCP)」というコンサルタント会社を設立し、運営している。BCPは、タイに進出を計画されている日系企業向けの「進出コンサルティング」と進出後の経営支援を行う「経営コンサルティング」「ビジネスマッチング」を業務の3本柱にしている。

コンサルタント業務に関係する者が、その業務の問題点を指摘するのは奇異に映るかもしれない。しかし、BCPが提案するサービスは極めて限定的になっている。「進出コンサルティング」においては、①主に行政・法律面を中心とした進出手続きと申請支援②会社立ち上げに必要な土地・建設・人材などのあっせん―だけである。

進出の基礎検討材料である顧客ニーズや競合先の研究などは、基本的にお客様の仕事としている。また「経営コンサルティング」業務についても主に「マーケット調査」や「生産技術指導」に絞り、経営資源の不足しがちな中小企業を想定して行ってきている。コンサルタントは貴社の問題をすべて解決してくれる魔法の玉手箱ではない。専門的な知識の供給や基礎データの収集・分析を手助けしてくれる補助者なのである。「コンサルタントに丸投げする会社に将来はない」と私は思う。

—次回に続く