【第27回】「おもてなし大国」日本?(前編)

妻と2人でマンダリンオリエンタル・バンコク(以下オリエンタルホテル)にブランチ(朝食兼昼食)を食べに出かけた。オリエンタルホテルは1887年設立。バンコク初の西洋ホテルとして、チャオプラヤー川のほとりにある大使館街の真ん中に造られた。

ゆっくりとした時間の流れの中で人々のにこやかな顔

古くから作家のサマセット・モームやジョセフ・コンラッド、さらにはタイシルクで名高いジム・トンプソンなど数々の著名人が定宿としていた。1970年代に香港に本拠を置く高級ホテルグループであるマンダリングループに買収されたが、世界の最高級ホテルに何度も指定されるなど、そのサービスは世界屈指のものである。

私と妻はそのオリエンタルホテルの中にある「ベランダ」という屋外レストランに行った。周囲はヤシの木に囲われ、眼前にはチャオプラヤー川が流れる。

川を何隻もの船が行き来する。渡し船やホテルの送迎船が両岸の間を渡っている中で、大型観光船や荷役船がゆったりと川を滑っていく。厳しい南国の陽をあびた川を、木陰で微かに汗ばみながら見る風情は何とも言えない幸せな気分を味わせてくれる。

まわりを見回すと西洋人のご老人夫婦が多く目につく。いつになく厳しい今年の冬の米国やヨーロッパから逃げてきた人たちであろう。南国を満喫するべく軽装で、カラフルな洋服がご老人ながらよく似合う。私たちの左隣の夫婦はアメリカンブレックファスト(パン・卵焼き・ハム・ベーコン・ジュースなどのセット)を食べながら、ゆっくりとした会話を楽しんでいる。右隣の夫婦はご主人が新聞を読んでいるが、奥様はかまわず話しかけている。ご主人は新聞から目を離さず「ふんふん」と相づちを打っている。

こうしたお客に対して、ホテルのウエイトレスたちは新たな皿を運ぶたびに声をかける。
「おはようございます、モニカさん。お食事を楽しんでいらっしゃいますか?」
「ありがとう、とってもおいしい食事よ。それに目の前の景色を楽しんでいるだけで、あっという間に時が経っていくわ」
「それは良かったです。ゆっくりお食事を楽しんでください、モニカさん」「ありがとう、本当にここでのお食事は楽しいわ」

たぶん宿泊客なのだろう。ウエイトレスが名前を呼びながら親しみを込めた言葉を繰り出すと、お客も何度も感謝の言葉で応える。

ゆっくりとした時間の流れの中で人々のにこやかな顔を見ながら、私はふと一つの光景を思い出した。2020年東京オリンピックの招へいを決定付けたと言われる、滝川クリステルの「お・も・て・な・し」の言葉である。日本を訪れる外国人の人たちは、果たしてこれほどまでの幸せな表情を日本でするのであろうか?

—次回に続く