日本食レストランの出店ブームの中でいくつか気づくことがある。その第一が、最近の日本人の貧しさである。高級日本食レストランのテーブル席に行くと、その多くはタイ人の金持ちで占められ、まぐろや直輸入のカニ、日本各地の特産牛のステーキなどをアラカルトで注文している。

個人では高級店に行かない日本人

高級店に日本人客が行かないのかと言えば、そういうわけではない。日本の会社は取引先を接待する際は、顔を見られないように個室を利用する。毎夜、会社の接待交際費を使って日本人は高級日本食レストランを利用する。しかし、個人の金ではこうした店には行かないのである。

過去20年間のデフレによって、日本人の金銭感覚は世界と大きくずれてしまった。加えて、最近の円安である。現在の日本は、500円あれば昼食が食べられる。日本に出張した際、昼食時に東京のオフィス街に行ってびっくりしたことがある。多くの若者がコンビニで買った弁当を、公園で一人で食べているのである。昼食代は400円程度だろう。

一方、バンコクの日本食店では昼食でも、最近は1,000円近く取られる。物価の安いタイでも、いわゆる価格逆転現象が起こってきているのである。いわんや米国やヨーロッパなどで昼ごはんに日本食を食べれば2,000円から3,000円になってしまう。日本人が世界各国に行って、日本と同じ価格水準で振る舞えば「日本人は貧乏人である」と思われかねない。

目的が明確でない商談会は税金の無駄遣い

最近の日本食ブームの中でもう一つ気になることがある。タイに出店しようと考えている人の中に「タイに来れば何とかなる」という、楽観的な見通しに支えられた人が多くなっているような気がする。3000店近くある日本食レストランも、その入れ替わりは激しい。いくつものレストランが開店から1年もしないうちに店を閉じていく。

立地・メニュー・サービス・価格が、顧客ニーズにマッチしているのはもちろんのこと、味を維持し続けることは極めて難しい。長く続いている店はこうしたことに不断の努力をしている。

またタイでは、日本の地方自治体や地方銀行に後押しされた、地方の特産物の売り込み商談会が多く開かれている。しかし私の目から見ると、目的やターゲットが曖昧なものが多いように思う。

商品の輸入を行う卸売業者、スーパーマーケットや日本食レストランなどの小売業者、タイ在留日本人もしくはタイ人などの最終消費者。商談会の中には、誰に対してアピールしようとしているのか分からないものが多い。商談会を行うこと自体が目的化しているのならば、国や地方自治体が支出するこうした商談会に対する補助金は、税金の無駄使い以外の何ものでもない。

—次回に続く