【第18回】「リベート社会」を考える(前編)

コンプライアンスの妄想に取りつかれた日本人にとって「リベート」は悪である。金は汚らわしいものとして扱われ、取引先との金品のやり取りは厳禁。一方で下火になったとはいえ、いまだ飲食やゴルフの接待は平然と行われている。

華僑の3:3:4の原則

タイに来て華僑の社会に入り込み、彼らの生き方を見ていると、日本人とのいくつかの違いに気づかされる。その一つが、華僑の「3:3:4の原則」である。日本の方にとって全くなじみのない原則であるが、この原則は華僑の方が商売などで利益を挙げた時の分配方程式である。

具体的には、あなたが10の利益をあげたら、3は従業員に還元、3は取引先に還元、4は自分の利益として残すという思想である。従業員に還元する3はボーナスであるが、取引先に還元する3はいわゆる「リベート」である。すなわち華僑の商売では「リベート」が前提となっているので、関係者が利益を分けあう形で商売が繁盛していくのである。

日本は交際接待費天国

一方で、華僑の社会では通常、「交際接待費」などない。顧客との飲み会などは取引先に還元する3の資金が出されるものであり、個人の懐から払われる。現に、バンコック銀行も交際接待費枠を持っているのは、日系企業を担当している私を含めてほんの数人である。

こうした交際接待費は華僑の目から見ると、日本人とは反対に異様に映る。日系企業と合弁会社を運営する華僑の方からは、日本人が交際接待費で飲み合いすることを「会社の金を盗んでいる」と同じではないか、と疑問を呈される。

日本人であれば、すべからく会社の金を勝手に使えるのは全く理解出来ないことである。なぜならば華僑の人が金をつぎ込むのは確実に自分の利益につながると見込まれるものに限られ、それも自分の金を使って行うからである。

それに対して日本人は、直接利益につながらない相手とも交際接待費を使い、時には社内接待すら行われる。こうした交際接待費文化は日本の「ガラパゴス現象」の一つである。

—次回に続く