外国為替が大きく変動するのはそれほど頻繁ではない。それがゆえに為替リスクの怖さをわかっている人もそれほど多くはない。
 

為替リスクについては理解しているが、その恐ろしさについて実感していない

現在、外国為替市場を支配しているのは、オフショア資金などを中心としたヘッジファンドなどであり、これらの巨額な資金量に対して多くの国は対抗手段を持ち合わせていない。いわんや一般企業が太刀打ちできるものではない。

これらヘッジファンドが意図的に攻撃を仕掛けたのが、1997年のアジア通貨危機である。また08年にはリーマンショックが起こり、バーツ/円の通貨変動により多くの在タイ日系企業は多額の損失をこうむった。どのくらい多額であったか以下の算式をご覧いただきたい。

【08年1月】
1億円の親子ローン実施→3,085万8千バーツ

【08年12月】
決算会計→3,862万5千バーツ
差し引き→776万7千バーツの損失
その年1億円の親子ローンを組んだ企業は、年末において実に2,100万円もの損失が発生したのである。せっせと1バーツ、2バーツのコスト削減に励んでいる会社が、外国為替の変動だけで一挙に800万バーツ弱の損失が発生するのである。
こうした多額の為替差損が発生するのは、決して世界的な経済危機のときだけではない。直近では15年から16年にかけて急激な円高方向の為替変動があった。以下の事例を見ていただきたい。

【15年9月】
1億円の親子ローン実施→2,995万7千バーツ

【16年12月】
決算会計→3,430万5千バーツ
差し引き→434万8千バーツの損失
平常時であっても、こんな多額な為替差損を被る危険性はある。こんな負の資産を抱え込んでしまったら会社全体の士気にも大きく影響する。また世界的な経済危機についても前回のリーマンショックから10年が経過した。従来よりこうした世界的経済危機がほぼ10年周期で起こっていることを考えると、いつ何時“急激な為替変動”が起こってもおかしくないのである。けだし恐ろしや、である。

信頼できる銀行をつくる努力を

これまでタイへ進出した日系企業の失敗例を見てきた。いずれもやり方さえ間違えなければ避けることができるものである。今回の為替リスクによる損失はまさに銀行取引そのものにかかわるものであるが、それ以外の類型である進出の際の事前検討や犯罪防止策などについても、銀行にあるノウハウをうまく利用すれば十分対応可能なものだと思われる。

信頼できる銀行を持つことは、進出成功への一つの秘訣でもある。

—次回に続く