タイには相変わらず、多くの日系企業の進出が続いている。しかしバンコック銀行日系企業部が、タイ商務省のデータを活用して行った内部調査では、タイ進出日系企業の約3分の1は恒常的な赤字もしくは債務超過になっているとの結果を得ている。

タイ進出済み日系企業5444社のうち3分の1の企業が赤字と仮定すると、約1800社は問題を抱えているということだ。問題の原因は、以下の4つに類型化できるだろう。

● 目的の明確ではない海外進出
● 企業内犯罪
● 人事管理
● 資金繰り

今回は、この中で最初に挙げた「目的の明確でない海外進出」を検討してみよう。

手軽な進出の先にある落とし穴

そもそもタイに顧客がいるのか? 自社の製品が顧客のニーズに合致するのか? 競合先はあるのか? 自社製造に価格競争力はあるのか? こうした問題は、進出予定先であれば当然自分で確かめなければいけないことである。例えば、タイに来て主要顧客を訪問する。友人、ジェトロ、銀行などに尋ねる……。時には競合先を訪問することも、やってしかるべきである。

しかし実際には、こうしたことをやらない人が多すぎる。特にここ数年は、工場新設などの多額の費用負担を必要としないサービス業の進出が増加しているため、「皆がタイに行くから」といったブームに乗った手軽なタイ進出が多いように感じられる。政府、地方公共団体、銀行などが企業の海外進出をあおるため、タイに進出しないと損をするような気にでもなるのだろうか?

企業特性を考慮しているか

製造業においては、原価計算や進出場所の詳細について検討がなされていないケースもある。日本より土地の値段や工場建設費用が安いからと言って、安易に進出を決めるケースが見受けられるが、今後進出する企業が競合するのは、既に数年前にタイに進出している日系企業ならびにすでに力をつけたタイの地元企業なのである。

既に進出済みの企業は、格段に安い値段で土地を手に入れ、機械の減価償却は終わっているかも知れない。また、進出場所についても「赴任する従業員のことを考えてバンコクに近い所に決めました」という優しい本社社長もいる。しかしバンコクに近い所であれば、当然のことながら、土地の値段も高ければ、人件費も高くなる。

大手企業との競争から、現地労働者の採用の難しさも想定される。もちろん、重要な顧客との距離の近さを考慮してバンコク近郊を選択することもありうるだろう。いずれにせよ進出場所の選択は、あくまでもその企業の特性を考慮に入れて行われるべきである。

—次回に続く