【第06回】タイは日系企業にとって宝の山か?(後論)

日本貿易振興機構(ジェトロ)バンコク事務所は、タイ商務省データを基に定期的に在タイ日系企業進出動向調査を行っている。17年10月の調査によれば企業活動を継続している在タイ日系企業社数は5,444社であり、3年前に比較して877社も増加しているのである。

地理的、物流面でみたタイの優位性

前回に続く。第三の要因は、タイの輸出拠点化である。米国向け、中国向けなら日本からの輸出が最良かもしれないが、欧州、アフリカ、インド向け輸出には日本とタイのどちらが地理的に有利だろうか? タイに居住されている方ならばすでにご存知のことであるが、バンコク郊外には完全舗装した片側4車線の道路が縦横無尽に走っており、日系企業はこうした道路網を使って輸出製品の運び出しを行っている。つまりは、タイは地理的にみても、物流面でみても大きなメリットがあるということだ。

さらに、最近の要因として挙げられるのが、タイでは日系企業の多くが過去に利益を上げていたという事実である。2018年8月発表のバンコク日本人商工会議所の調査によれば、84%の企業が18年度の利益確保を予想していた。回答した企業はタイ進出の歴史が長い大手企業が多いため、数字はかなり上振れしていると思われるが、それにしてもかなりの企業が利益を確保していると推計される。

バンコック銀行日系企業部が商務省のデータを活用して09年に行った内部調査でも、タイ進出日系企業のうち約3分の1の企業は恒常的な赤字もしくは債務超過となっているが、残り3分の2の企業は水面上に浮いていた。この数値は、日本の上場企業の黒字比率と比較しても高い水準にある。

こうしてみると、まさに「タイは日系企業にとって宝の山である」と言っていいかもしれない。ただし、これからタイ進出を考えている企業にはぜひ、以下の2点を留意していただきたい。

まず、前述の通り、09年に私どもが独自に行った調査によれば、当時の在タイ日系企業の約3分の1が事業に失敗しているという事実である。その数字を現在の在タイ日系企業数に単純に当てはめてみると、5444社の在タイ日系企業のうち約1800社は赤字もしくは債務超過状態にあると推測される。これは日常多くの日系企業と銀行取引を行っている私どもの皮膚感覚に近いものである。

留意すべき第2点目は、進出企業の成功例は過去の事例であって将来を保証するものではないということである。過去の成功例が返って足元をすくうケースも多い。現在の事業環境を冷静に見つめなおすことが必要である。

これら留意すべき2点について、次回以降くわしく検討していきたい。

—次回に続く