【第81回】銀行におけるビジネスマッチングの有効性(後編)

発想の転換こそ新たな産業創出のカギ

我々が生き残っていくためには、是非ともタイの日系企業に頑張って頂くしかない。

タイの日系企業が今後も繁栄していくためには、当地においても新たな産業の創出が必要なのである。

では、新たな産業の創出のためには何が必要なのだろうか。

経営学者であるピーター・ドラッガーは新たな産業を生み出す技術革新の機会として、「人口動向の変化」や「顧客需要の変化」など七つの要素を挙げている。

このうち、彼が特に最も多く技術革新を生み出しているとしているのが「あとから考えると、何だこんなこと」と思う発想の転換である。

この発想の転換をもたらすためには、異業種・異文化の異なった発想の融合が必要なのである。

残念ながら、ウォークマンのソニーが衰退しアップルに取って代わられたのも、ゲーム市場がソーシャルゲームになり、韓国企業に負けたのも、また日本の掃除機がルンバやダイソンに負けたのも、すべては発想の貧困さからである。

より豊かな発想を求めていくことが産業育成には極めて重要である。

そうした観点からもビジネスマッチングは「きわめて重要な出会いの場」であると私は考え直した。

それでは、いかにしてビジネスマッチングをやっていけば良いのであろうか。

どうせやるなら、ビジネスマッチングも実績を挙げなければ意味がない。

日本の地方公共団体の人たちが知事や市長を戴いて大挙してタイを訪問し、日本大使館やタイ工業省などを訪れ、その後関係者だけが出席する「形だけの商談会」を開催していく。

最近は少なくなってきているが、私には「税金の無駄使い」としか映らない。

片手間で出来ないものは
「餅は餅屋」に任せる

マスコミに写真を撮らせるだけの商談会ではなく、本当に実績を挙げられる商談会とはどのようなものであろうか。

日本で商談会やビジネスマッチングを行っている方々からもお話をお伺いしたが、日本でわずかながらうまくいっている商談会は、日本各地の食べものを集めた「食の商談会」のようである。

なぜ「食の商談会」がうまくいっているかというと、商品が食べものであり、主催者や参加者が容易に商品内容を理解出来ること。

更には一般消費者が食べものに興味があり、観客が比較的に集まりやすいことにある。

また、デパートなども「特別催事」の枠を埋めるため、積極的に「地方物産展」を取り上げているなどの事情もある。

これに対して、工業製品の商談会やビジネスマッチングは、なかなかうまくいっていない様子である。

その理由は売りたい人が圧倒的に多く、買いたい人を見つけるのが難しいこと。

また、主催者側にこうした製品知識に詳しい人を見つけるのが難しいことである。

特に銀行員にはハードルが高い。

日本の地方銀行では何をしているかと言えば、専門部署が「ビジネスマッチングリスト」なるものを作ってコンピューター上で各支店に開示している。

しかし支店の営業担当では製品を理解出来ず、実際にはほとんどビジネスマッチングが成功している事例はないようなのである。

こうした教訓をどのようにタイで生かしていくのであろうか。

結局ビジネスマッチングは銀行員の片手間作業では出来ないのである。

このため、私達は前述の通り、ビジネスマッチングの専門家である提携企業にバンコック・コンサルティングパートナーズの株主になってもらうことにより、同社と提携関係を結んだ。

バンコック銀行の提携先として、提携企業には当行顧客のためのビジネスマッチングを積極的に担っていただくようお願いしたのである。

これとは別に、バンコック銀行の提携銀行である日本政策金融公庫は日本人商工会議所、ジェトロの協力を得ながら、バンコクで年1回の商談会を実施している。

提携企業と日本政策金融公庫の両者に共通するのは、工業製品を購入したいという会社を連れてくる能力があること、ビジネスマッチングの専任者を置き、製造知識にも精通していることが挙げられるだろう。

この二つの重要な要素をもっているからこそ、FNA社と日本政策金融公庫主催の商談会は成約率も高く、本当に顧客に役立っているといえるのである。

私どもバンコック銀行では、本当にお客様に役立つ機会の提供を目指している。

残念ながらビジネスマッチングについては、我々の片手間仕事では十分なことは出来ない。

バンコック銀行日系企業部のお客様が提携企業ならびに日本政策金融公庫の二つの商談会を積極的に利用して頂くことにより、当地において日系企業がますます繁栄していくことを私は切に希望している。