【第80回】銀行におけるビジネスマッチングの有効性(中編)

「いかに顧客のためになるか」が仕事の発想の基本

東海銀行勤務時代に、バンコック銀行をはじめとしてアジアの有力銀行との提携を模索し、提携銀行の金融商品を使い日系顧客の取り込みを図ろうとしていた私にとって、なぜ地方銀行の人たちがビジネスマッチングを最優先に挙げるのか、当初はわからなかった。

しかし、じきにその理由が判明した。

その当時、有力地銀はこぞって上海に駐在員事務所を設置していた。

ところが駐在員事務所はそもそもその業務が調査情報収集に限られ、顧客に売るべき商品もない。

顧客訪問をしても顧客からは「何の役にも立たない」ため、うるさがられるだけの存在である。

こんな中で、ビジネスマッチングは唯一顧客に感謝される仕掛けであったのである。

特に中国では、バンコック銀行と提携関係にある企業が積極的にこれら地方銀行の受け皿として、ビジネスマッチング業務を展開している。

このため多くの地方銀行がビジネスマッチングで顧客に感謝された成功体験を持っていたのである。

このビジネスマッチングを重宝がる風潮は海外だけではなく、日本国内も同様であった。

成熟化した経済のもと、銀行貸出は伸び悩み、製品差別化の出来なくなっていた銀行は、こぞってこのビジネスマッチングや顧客商品のセールス支援に飛びついた。

ここで顧客に恩を売って、何とかほかの金融商品を使ってもらおうという「おまけ作戦」である。

しかし、私はこうしたビジネスマッチングに当初否定的であった。

そもそもタイでは日系企業は上手に銀行を使いきれていない。

預金、貸し出しでも十分に銀行を活用できていない顧客が多い中、デリバティブ、キャッシュ・マネジメント・システム、プロビデントファンドなどを利用して頂ければ、業務の効率化、リスク管理、従業員福祉などあらゆる面で企業活動がより円滑になるのである。

バンコック銀行日系企業部では、こうした商品を売り込むにも、人手や時間が足りないのである。

更に言えば、商品を売るのは企業の本来業務である。

なぜ銀行が積極的に手伝う必要があるのだろうか? こうした考えが私の頭から離れなかった。

私の銀行員としての仕事の発想の基本は「いかに顧客のためになるか」である。
部下に対しては常々「顧客に良いことをすれば、必ず我々の所に良いことがある(Good for Customers, Good for us)」と言ってきた。

銀行商品の整備と拡販の次に私が取り組んだのは、年4回のセミナー開催とコンサルタント会社「バンコック・コンサルティングパートナーズ」の設立である。

お客様がタイにおいて円滑に業務を行っていくためには、言葉、法律、文化、商習慣など様々なことを理解、習得していかなければならない。

私たちのお客様がこうしたことを会得する一助として年4回セミナーを行っている。

またこれとは別に、主にタイ進出や法務、トラブル処理を念頭にコンサルタント会社を設立。

「ニュース屋台村」の執筆陣に加わっていただいている「物づくりの研究家」である迎洋一郎さんの力を借りて工場診断や、日本人熟練者の人材紹介なども行っている。