【第67回】日本食は最強の親善大使(後編)

日本の食材をタイで売り込んでいくためにはどうしたらよいのであろうか?日本食材と言っても農水産物、果物、日本食加工品、菓子、酒類など保存期限もマーケットも違う。個々の食品を売るためには個別に売り方の検討をしなければならないが、ここでは最大公約数として語れることを議論したい。

「品質の良さ」「低価格」「便利さ」の追求

まず日本食材がタイで受け入れられるための要素は何であろうか? これはどんな製品でも当てはまることであるが「品質の良さ」「低価格」「便利さ」に集約されるであろう。

日本食材に置き換えると、「品質の良さ」は「おいしさ」であり「便利さ」とは「食品の保存期間の長さ」や「調理の手軽さ」であろう。

これに加えて日本食材輸出にあたってのコスト低減について日本サイドでどのくらい検討されているのであろうか?
これらの件について在タイ食品卸売業者の方の意見を伺うと、かなり手厳しい言葉が返ってくる。

品質については日本産品の高品質は折り紙付きである。

しかしタイの人の味覚に合う形での料理の工夫がなされているかといえば心もとない。

品質が良いからと言って、日本で受け入れられるものがすべてタイで受け入れられる、と考えるのは間違いである。

それ以上に、在タイ食品卸売業者が頭を痛めているのは、日本産品のコストの高さである。

このコスト高の主たる要因は、物流費の高さである。

物流費といっても、何と日本サイドの物流コストの高さが問題なのである。

日本の港湾事業は過去からの利権によって複数の事業者の間で振り分けられている。

荷受業者、乙仲業者、倉庫業者、陸運業者などである。

こうした日本サイドの物流コストの高さは日本の輸出産業の競争力を奪っているのである。

港湾事業の近代化は日本全体として早急に取り組むべき課題となっている。

次に在タイ食品卸業者が指摘するのは、「日本食材が輸出仕様になっていない」ということである。

具体的には食材の保存期間を長くする努力がなされていない。

日本国内で流通させるのとはわけが違う。

海外に持ち出す商品にコスト競争力を保持させるためには、コンテナで大量に物を運ぶ必要がある。

海外輸送を行っても品質の高さが保証されるような食品の管理方法がなければ安く輸出はできない。

県や市などの地方公共団体の方たちには「いかにしてその地方から安く大量に物が輸出できるか?」をぜひ考えていただきたい。

税金を使わないでもできる仕事である。

日本食の普及は文化活動と同じ

「タイにおいて日本食が今以上に一般的になれば日本食材の需要が高まる」と考えてもおかしくないだろう。

タイ全土で現在、日本食レストランは3600店以上あるが、そのうち2000店はバンコクにある。

日本食レストランがさらにタイ全土で増加すれば日本からの食材輸出も当然増えていくに違いない。

日本食材の普及のためには、県や市が行っている日本人向けの商談会はほとんど役に立たない。

それよりもタイ人向けの物産展である。

すでに日本の地方公共団体でも北海道のようにこうした領域に数年前から入り込んでいるところもあるが、それ以外の地域はまだ著に着いたばかりである。

こうした物産展の問題点は、結果がすぐに出ないことである。

日本食の普及とは文化活動と同等であり、タイ人に対しての「息の長い活動」が要求される。

これは一企業ではできない話であり、是非とも政府の支援が必要な領域である。

バンコック銀行ではVIP顧客を対象にした「バンコククラブ」という会員制クラブがあり、年2回日本各地の日本酒をタイ人の金持に紹介している。

本年は3月21日と10月24日の2回、日本酒テイスティング会を開催。

北海道、宮城、山形、奈良などの日本酒20種類以上を業者から提供していただき、試飲者から感想をいただき、200件以上のアンケート調査が行えた。

是非とも今後のマーケティングに生かしていただきたい。

現在、中国はタイ北部のチェンライ市で中国語学校を設立し約200人の教員を送り込んできていると聞いたことがある。

私自身が真偽のほどを確認したわけではないが、中国は長い時間をかけてタイを「親中国」にさせようと画策しているのであろう。

中国はこうした活動を世界各国で行ってきており、ラオスやミャンマーなどでは成果を上げている。

しかし、日本にも世界に冠たる日本料理がある。

たとえば県や市など日本の地方公共団体は日本各地の地元料理をタイ人に教える料理学校を開設してみたらどうだろうか? この日本料理を通してタイを親日国につなぎとめていくことが十分可能なのである。

日本食の料理学校を通して先生など人の派遣、食材の輸出、さらには親日国政策が可能になるなど「一挙三得」の施策である。

一部の地方公共団体ではバンコクに特産物を販売するアンテナショップの開設した。

しかしアンテナショップは東京でも成功していないと聞く。

効果の薄いアンテナショップよりは、日本食の料理学校の開設を検討していただきたいと私は考えている。