【第64回】老いては孫から学べ(前編)

私には3人の孫がいる。私がバンコクにいるため3人の孫に頻繁に会えるわけではない。しかし私の日本出張や子供たちがバンコクに遊びに来てくれるなどで、孫と遊ぶ機会もある。

もともと子供好きを自称している私であるが、自分の孫はやはり特別可愛い。

夕食を食べにレストランに行っても「べったり」とかまっているので、「ジジ馬鹿だねぇ」と、初めてお会いした日本人の方にも揶揄される始末である。

我が3人の孫とじっくりと付き合ってみると、人間の本質に迫る多くのことを孫たちから教えてもらえる。

今回はその3人の孫のうちK君がタイに遊びに来た時のことをお話ししたい。

何歳になっても経験を積まなければ人間は賢くならない

K君は生まれて10カ月。

人によって差はあるものの、K君は身長70センチ、体重8.3キロといったところ。

ハイハイ歩きがかなり上手になり、つかまって立つことも出来るが、一人歩きはまだ出来ない。

言葉は「アッ!アッ!」と叫ぶのみ。

食事は固形食が食べられるようになり、ミルク卒業も間近といったところだ。

こんなK君であるが、とにかく好奇心が強い。

珍しいものを見つけると猛ダッシュで「ハイハイ」をして行き、まず手で触ってみる。

まだ十分に手先を使いきれないが、親指と人差し指を使ってそれをつかもうとする。

次に手のひらで触った後、今度はそれを叩いてみる。

ここで音でもしようものなら喜んで叩き続ける。

ひとしきり叩いてそれに飽きると、おもむろにそれを口に入れて味を試そうとする。
五覚(視覚・嗅覚・聴覚・触覚・味覚)を総動員してその新しいものを理解しようと努力する。

食事中も同様である。

固形物を食べ始めたK君にパンや肉、野菜、果物などを食べさせる。

せっかく我々がK君の口の中に運んだ食べ物であるが、K君はその味を確認した後、食べ物を手で取り出し、まず握りつぶす。

その後机の上にあるその食べ物を叩く。

当然のことながら食べ物はあちこちへ飛び散る。

全く悲惨な状況である。

しかし、ここで怒ったりがっかりしたりしてはいけない。

これらの作業はK君にとって、とても重要な学習過程なのである。

以前NHKスペシャルで「赤ちゃんの神秘」を取り上げていたが、人は1歳になる前に知識の源泉となる神経細胞を作り上げるのだそうだ。

この時までに出来るだけ多くのものを経験させることによって、人間としての知能が上がっていくのである。

1歳までに人間の知識の源がつくられるのだが、これだけで人間の能力が決まってしまうわけではない。

この後、人間は1歳までに出来上がった神経細胞をつなぐ線を作っていくのである。

多くの経験をすることによって、神経細胞をつなぐ線が太くなり、知能が高まっていくのだそうである。

何歳になっても経験を積まなければ人間は賢くならないのである。