【第61回】国家は破綻する(後編)

先週は、3つのシナリオを見てきたが、これに対して「日本は依然として金融危機を迎えることはない」と主張する人がいる。

この議論の根拠は、日本国内にある膨大な個人資産である。

気になる膨大な個人資産の行方

現在の日本の政府債務は、国債・政府短期証券や地方債などで1,325兆円(IMF推計)に達する。

日本のGDPの240%もの金額に相当する。

しかし一方で、日本には1,500兆円もの個人金融資産(ネット)があり、これらの資産が銀行、郵貯銀行、年金、信託などを通して安定した国債の購入者となっているのである。

更にアベノミクス以降、日本銀行は国債を大量に購入。

その額は470兆円を超え、海外投資家による日本国債の保有高130兆円をはるかにしのいでいる。

海外のヘッジファンドは過去に何度も日本国債売りを仕掛けてきたが、日本国債は動揺することはなかった。

こうしたことから「日本が国内債務デフォルトになることはない」という主張である。

私もこの主張の大半については同意する。

日本国債に対する海外投資家からの売り攻勢から直接日本がデフォルトになる危険性は少ないと思う。

しかし、他の要因によって日本が金融危機にいったん陥った場合、日本の金融機関や投資家、個人も国債を投げ売りし、海外に資産を移し替えることは起こりうるであろう。

次に、この問題を議論するうえで考慮しなくてはいけないのは、世界の運用資産の規模の大きさである。

世界の運用資産は世界全体のGDPの約2倍となる100兆ドルは優に超えると見られるが、これだけ巨大化するとその運用場所は限られてくる。

米国国債市場、欧州金融市場、日本金融市場、そして新興国資源市場の4つである。

このうち欧州と新興国資源市場は問題を抱えており、世界の運用資産は相対的にこの2つの市場よりリスクの低いと見られる日本の金融市場に資金を振り向けている。

日本のマーケットはファンドにとって「収益を期待する市場」ではなく、「資産を安定的に運用する市場」である。

現在日本の東京株式市場の株式総額は550兆円を超えるが、このうちの3割は海外投資家が保有している。

海外投資家はドル建てでの日本株の持ち値を安定させるべく円安になれば株高に、株安になれば円高へと海外ファンドは誘導してきている。

海外ファンドの日本市場を見る目が変わらなければ問題はないが、いったん牙をむき日本市場を収益市場と見れば、大量の資金が流れ込んできて日本の金融市場はパニックになる。

日本株と円の同時売りでパニックに

それでは今後、日本はどのような形で破綻する可能性があるだろうか? 私が恐れるストーリーは「海外ファンドによる日本株と円の同時売り」のケースである。

前述のように日本の株式市場の3分の1は海外投資家の保有株である。

200兆円ちかい株式を一斉に売られ、その資金をドルに換えられたら日本円は大暴落する。

外貨準備高を超える円売りにより、歯止めの利かない円安となる。

当然輸入品は高騰するが、特に問題となるのが食料である。

自給率が37%しかない日本は、この食糧の取り合いとなり、1945年に経験した年率500%のハイパーインフレになるだろう。

日本全国がパニックとなる。

ではいつ、このような事態になるだろうか? 日本経済が破綻するには何らかの契機が必要であろう。

それは、地震や噴火などの天災による大都市の崩壊、または大手金融機関の破綻などが引き金となろう。

しかしいったんこうした口実が与えられれば、海外投資家から攻撃を受け、国全体の破綻に至るほど日本は問題を抱えている。

こうした問題を加速化させたのが、アベノミクスである。

そもそも安倍首相は経済成長のためなら財政再建は後回しにしても良いと考えている。

アベノミクスによる財政出動により政府債務は増え続け、もはや返済不能なところにまで来ている。

このため、海外格付け機関は日本国債の格付けを中国や韓国よりも低い「A+」(ムーディーズ)としている。

海外投資家から見れば、日本という国家はリスクを取れるギリギリの水準にまできてしまったのである。

いつなんどき、海外投資家が資金を引き揚げるか分からないのである。

大胆な金融緩和政策は日銀の資産増大を招き、海外から円の価値を疑問視せざるを得ない状況をつくり出してしまった。

円安により貿易収支は恒常的な赤字となり、日本の富は急速に減っていく。

更に今回の金融緩和策により日銀はすべての手段を使い尽くし、いったん海外投資家からの攻撃を受けると何ら対抗策を持たないのである。

本当に必要な施策である成長戦略はほとんど実施されていない、と言っても過言ではない。

できるだけ早くアベノミクスの金融財政政策を変更しなければ、「日本の破綻」は目前に迫っている。