【第60回】国家は破綻する(前編)

いきなり物騒なタイトルを眼にしてびっくりされた方もいるかもしれない。米国で出版された書籍のタイトルである。しかし決して絵空事でない。世界的な経済危機を思い出していただきい。

1987年の米国のブラックマンデイ(暗黒の月曜日)・1997年のアジア通貨危機・2008年のリーマンショック。

振り返ればほぼ10年ごとに世界経済危機が訪れてきている。

アジア通貨危機の際はこのタイが危機の発端となり、ほとんど国家破綻の状態になった。

リーマン危機から10年以上たった現在「いつでも国家破綻が起こる状態にある」と考えても不思議ではないのである。

今回は日本に焦点を当ててこのことを考えてみたい。

金融危機の5つの類型

2008年のリーマン・ショックを契機として出版されたカーメン・ラインハートとケネス・ロゴフの共著、それが『国家は破綻する』(2011年、日経BP社)である。

この本では1800年以降に起こった金融危機を5つに類型化して分析している。

簡単に説明すると、以下の通りとなる。

【対外債務デフォルト】
1800年から2009年までは計250回発生。

中、後進国で頻繁に起こる。

商品相場の下落が主要因。

近年では対外債務デフォルトは次に述べる先進国銀行危機とリンクする可能性が大きい。

【国内債務デフォルト】
1800年以降68回発生。

ハイパーインフレにつながる可能性大。

日本では戦後すぐに発生した。

この時の国内債務GDP比率は266%。

インフレ率は1945年に500%を記録した。

【銀行危機】
先進国の方が頻度が高い。

金融自由化諸国で多く発生しており、住宅価格の上昇が銀行危機に影響を与える場合が多い。

銀行危機はインフレ・通貨危機につながる可能性が高い。

【インフレ】
紙幣印刷機の登場によりハイパーインフレが登場。

ハイパーインフレと通貨危機は同時発生する。

【通貨危機】
固定相場の維持と不整合な財政金融政策によって起こる。

日本破綻のシナリオ

過去の歴史の教訓が書かれた同書を読むと、日本は幾つかの金融危機の直前にいることを思い知らされる。

日本破綻のシナリオが幾つも書けてしまうのである。

【シナリオ1…国内債務デフォルト】
前述のように第2次世界大戦後すぐに日本はこの金融危機を経験している。

この時国内債務の国内総生産(GDP)に占める比率は266%。

現在が240%である。

過去の経験に照らし合わせて、現在の日本はこの国内債務デフォルトに「いつなってもおかしくない」領域に達している。

【シナリオ2…新興国の対外債務デフォル】
石油価格の大幅下落によってもたらされている現在の新興国の通貨下落は、これらの国が対外債務デフォルトになる危険性をはらむ。

ラインハートらの研究によると、対外債務デフォルトになる国の経済指標に一定の傾向値は見られない。

一方で過去の歴史を見ると、簡単に対外債務デフォルトを宣言する国がある。

1800年以降、具体的にはスペインが14回、ベネズエラが10回、ブラジル・メキシコ8回、インドネシア4回ほどの例が挙げられる。

また対外債務デフォルトは先進国の銀行危機を引き起こす。

対外債務デフォルトを起こした国に多額の貸し出しをしていた特定の銀行に対する信用不安は瞬く間に世界の金融市場に広がり、銀行間の貸出市場は機能不全に陥る。

日本国内で収益の期待できない日本の3メガ銀行は、近年急速に海外での貸し出しを増やしているが、これらの調達原資は海外の銀行からの借り入れである。

もしこれらがストップしたら、日本の銀行も大きな打撃を被る。

【シナリオ3…通貨危機】
通貨危機は基本的に固定相場制の維持と不整合な財政金融政策によって起こる。

世界中で固定相場を採用する国が少なくなる中で、近年では通貨危機の事例は少なくなっている。

しかし私の見解では、ユーロの単一通貨を採用しながら国ごとに独自の財政金融政策を行ってきたユーロ諸国の近年の金融危機は、この類型に分類できると考えている。

また、固定相場制ではないが市場の裁定を無視し、無理やり円安にかじを切ろうとしたアベノミクスは固定相場制の崩壊からくる通貨危機と同様のリスクを持っていると見ている。