【第43回】老人よ! 大志をいだけ地域再生への提言(その3)

日本の地域再生を図る上で最も重要なことは「若い女性が定着する環境づくり」であり、そのための第一歩として、産業育成の方法について前回、私案を紹介させていただいた。今回は「赤ちゃんの育児を含めた教育環境の整備」についてお話ししたい。

「家族や子供は仕事よりも大事」は本当か

最近の日本の論調を見ていると、「赤ちゃんの育児に関わる問題」は「イコール託児所不足」の問題のように聞こえる。核家族化が進み都会で働きながら育児を行わなければならない女性にとって、託児所不足は確かに死活問題である。しかし、それ以上に日本には大きな問題があると私は考える。普段はまったく子供に対して無関心でありながら、何か事が起こると一斉に魔女狩りのように走る日本の社会風潮である。
私は米ロサンゼルスでアメリカ人の経営する会社で、そして現在はタイの銀行と、海外で計2回、日本の会社以外で働いた経験がある。こうした会社で働くと日本の銀行時代には考えられないことに遭遇する。
子供の病気に伴う従業員の欠勤も極めて頻繁にあるが、「母の日」や「授業参観」などの学校行事でもしょっちゅう早退する。また周りの人たちも、それは当たり前のこととして、互いに仕事を積極的にサポートする。アメリカ人にとってもタイ人にとっても、「家族や子供は仕事よりも大事」なのである。日本でも、朝の主婦向け報道テレビ番組ではコメンテーターが「家族は仕事よりも大事です」と、したり顔で言っている。しかし、会社内の実態はそうはなってはいないのではなかろうか?

子供を育てる環境づくりを

更に驚くことに、アメリカやタイの会社の職場内には、時として子供たちがいるのである。ベビーシッターやメードが病気になったりすると、会社の女性たちは自分の子供を職場に連れてくる。
すると同僚たちも、この子供の面倒を一緒に見てあげる。夕方になると、会社の会議室や応接室などに続々と子供たちが集まってくる。学校から会社に子供たちが送られてきて、夕方になると一緒に親と子が会社から自宅に帰っていく。まるで、託児所が併設されているかのような錯覚に陥る。日本でこんな光景が展開されたら、目くじらを立て、「神聖な職場に子供を入れるのはけしからん」と一斉に攻撃されるであろう。
しかし、社会全体が子供に対して寛容なのである。アメリカやタイでは、ホテルでも病院でもレストランでも、見知らぬ人が赤ちゃんや小さな子供たちに関心を示し、声をかけてくれる。日本では、見知らぬ人が声をかけると犯罪者扱いされかねない。
とにかく、他人に対して無関心を装うのが日本で賢く生きる知恵のようである。しかしこんな社会では、子供に対して優しさなど表出されてこない。「人に声をかけ、人に優しくする」ことが子供を育てる環境づくりの第一歩である。