【第36回】優れたマネージャーの条件とは何か?(後編)

私が3番目に危惧しているのは、職場で使える技術的スキルが重視されなくなってきていることである。最近のマネジャー昇格基準は、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)に代表される実績重視と本部スタッフ重視なのではないだろうか?

「現地・現物・現場」の実践のスキルを大切にする

「グーグルの8つのルール」には、やってはいけないマネージャーの選定要件が載っている。それが、実績だけでマネージャーに昇格させることだ。業績は個人の能力よりも環境要因に負うところが大きいのである。KPIなどの数字に表わされる実績に基づく評価は一般的に、他者からの批判にさらされにくい。そうしたことから、多くの会社は業績中心にマネージャー昇格を決定している。しかしグーグルは、これを真っ向から否定する。

ここまで書いてきて、私はどうしてももう一つ言及したいものがある。それは私たち有志が立ち上げたネットマガジンである「ニュース屋台村」に「ものづくり一徹本舗」として連載していただいている迎洋一郎さんの記事だ。

迎さんが直接薫陶を受けたトヨタ生産方式の創始者である大野耐一さんや、その直弟子である迎さんのやり方は、「グーグルの8つのルール」そのもの。「現地・現物・現場」の実践スキルを決して馬鹿にしない姿勢。徹底して部下に考えさせ適切なアドバイスを心がけようとする姿勢。「巧遅拙速で良い」と励ましながら部下にまずやらせようとする姿勢。どれをとっても迎さんの説かれているトヨタ生産方式の真髄は「グーグルの8つのルール」に繋がるものがあると思われる。

全身全霊で関わり合う

最後に「グーグルの8つのルール」に対する私の感想を述べさせていただきたい。私は人生61年生きてきたが、決して「優れたマネージャーであろう」と努力してきたわけではない。だから、「グーグルの8つのルール」が私に当てはまるとは思わない。

私はこれまで勤めてきた会社2つが実質的に破綻した。そしてこの会社に勤めていた部下たちに申し訳ないことをしたと悔しい気持ちでいっぱいである。「なぜこの部下たちを助けられなかったのか?」「どうやってこの人たちの将来を保障してあげることが出来るのであろうか?」。こうした自問自答の中で導き出された結論は、「私は巡り合う全ての部下たちに全身全霊で関わりあい、私が知っていることを伝え、どこに行っても生き延びられるよう鍛えよう」ということである。

一方、「人は自分で経験しなければ身につかない」ということも自分自身の経験としてわかっている。部下たちには徹底的に実践を積ませ、私はコーチングに全力を尽くすというのが私の仕事のやり方である。

私は時として職場でも大声で怒鳴る。日本人に対してもタイ人に対しても、である。しかし、愛情を持って叱っている限り、相手も必ずわかってくれると私は信じている。勝手な思い込みでないことを祈りながらも……。

—次回に続く