【第33回】原点に立ち返ろう 日本の観光事業(前編)

私は年に2回ほど日本に出張し、1カ月をかけて全国各地を歩き回っている。各県を訪問すると、一様に「タイ人観光客を誘致したい」と私に訴えてくる。

訪日タイ人100万人突破

13年7月から実施されたタイ人の日本での短期滞在時(15日以内)のビザ免除の効果により、タイ人の訪日観光客数は2012年の26万人から、2013年には45万人と倍増。その後も増加を続け、昨年2018年には100万人の大台を突破し113万人となった。

こうしたことから、日本各地においてタイ人観光客誘致の高い期待が感じられるのである。しかし、その声を聴いてみると、「当地にはよい温泉があります」「水がきれいな土地なのでおいしい地酒が振る舞えます」「昔ながらの有名な和菓子があります」と、どの地も似たり寄ったりの内容である。

こうした売り込みポイントは、日本人観光客に対しては有効であろう。しかし、「タイ人は恥ずかしがり屋で同性であっても人前では裸にならないので、温泉には入りません。また普段味の濃いタイ料理を食べているので、味の薄い日本酒は好みでありません。またタイ人は基本的に日本のあんこが嫌いです」。このように「ダメ出し3連発」をすると、ほとんどの人は目を白黒させて黙ってしまう。日本に観光客誘致を図ろうにもタイ人の好みが全く把握されておらず、自分勝手な売り込みに終始しているのである。

タイ人にアピールできるもの

タイ人も人それぞれ嗜好が異なる。しかし総じてタイ人が日本観光に期待するものは、第1に土産物、第2にその地の有名な食事、第3に観光地となろう。土産物は旅行の記念に友人や親せきに買っていくものである。また、食事や観光地についてはタイ人の写真好きが大きな要因であり、記念写真をすぐにブログやフェイスブックにアップさせるのである。

多くの方は「当地にはおまんじゅう以外にもおいしい土産物や食事は何でもあります」と説明してくださる。しかし、「何でもあります」というのは「何もありません」と同義語だと理解してほしい。

それぞれの地で「これぞ」というものを、食事と土産物で一つ作ってほしい。昔からその地に伝わるものという既成概念を忘れてほしい。タイ人にアピールできるものを新たに町おこしとして創造すればよいのである。

—次回に続く