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【第10回】企業内犯罪は絶対に起こると思え(後論)

日本以外の国で白地小切手にサインだけをして渡す行為は、相手に「犯罪をして下さい」とお願いしているのと等しい行為である。しかし残念ながら、こうしたケースが後を絶たない。

人事担当者が架空従業員をねつ造し、時間外水増し

被害額が前回のケースほど多くならないため、不正が発覚しにくい。あなたは給与振り込みの際、その明細に目を通しているだろうか? 給与金額が不自然なものはないだろうか? 従業員数が、実際の人数より多いケースはないだろうか? 

給与振り込みの従業員口座は、1つの銀行に限定して開設するのが基本である。タイでは、他の銀行あてに振り込まれた送金の受取人を確認するシステムはない。架空の従業員かどうかの確認のしようすら出来なくなる。

調達担当者が自分のトンネル会社を作り、高い価格で材料購入

この方法も、タイではきわめて頻繁に行われている。サプライヤーへの支払いが銀行振り込みであっても小切手であっても支払い先の名前をきちんと確認しているだろうか? また、あなたはその支払い先を知っているだろうか?

材料などの購入にあたっては、相見積りを取っているだろうか? 大手企業や業歴の古い会社であっても頻繁にこの不正は起こっている。銀行の定例登録振り込みを利用するケースでは、事前に商務省データなどで支払先確認を行うなどの対策を取るべきである。

工場労働者が産廃業者などと結託し、在庫を廃棄物として横流し

工場から原材料、在庫がなくなるケースは多い。極端なケースでは、コイルセンターで何十トンものコイルがなくなったケースもある。このケースでは警備員と従業員が結託しなければできない。

また、ある電気会社では、優良在庫であるにもかかわらず長期不良在庫と称し在庫一掃セールにこれらの優良在庫を出品し、営業部長とあらかじめ示し合わせてあったディーラーがこれらの在庫を一括購入して営業部長にキックバックが払われたケースもある。在庫管理にも十分な注意を払う必要がある。

必ずチェック体制の導入を!

タイ警察などのデータによれば、タイにおける企業内犯罪の特徴は、8割以上の犯罪は大卒以上の学歴を持った人によって起こされていることである。

また、日系企業の中には日本語をしゃべれるタイ人を重用するあまり、すべての権限をこのタイ人に与え、不正に遭うケースがある。こうした時によく聞かれるのは、前回も指摘した「日本語をしゃべれる人は良い人だ」という誤った方程式である。

さらにたちの悪いケースは、日本人によって引き起こされる企業内犯罪である。私の知っているケースでは、当地で雇われた日本人社長が不正を働き、発覚して解雇されたものの2度目も同じような不正を働いたにも関わらず、現在3社目でまた雇われ社長をしているケースすらある。

不慣れな海外だからこそ安易に人を信用することなく、きちんとしたチェック体制を敷くことは、リスク管理の第一歩である。

—次回に続く